「グループの抜き」関連3 描画モードを分離

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今まで何となく上にのせて透明にすればグループを抜くことができるというTipsだけを目当てに「グループの抜き」を使っていた方も前回と前々回の解説で本質的な部分を理解していただけた事と思います。という事で、今回は透明パネルのUIで解説していなかった「描画モードを分離」について解説したいと思います。

描画モードの分離の基本

まずは基本的な挙動から。

こちらのデータは黄色の二重丸の複合パスと青い矩形がそれぞれ」グループ化された状態です。どのオブジェクトもそれぞれ乗算が指定されています。
左の描画モードを分離していないグループは下のグレーのストライプにも乗算が影響を及ぼしています。一方、右側の描画モードを分離した方はグループ内では乗算の表現が有効になっていますが、グループに含まれていないグレーのストライプに対してはノックアウトされた状態になっています。これが「描画モードの分離」の基本です。まとめると…

描画モードの分離が適用されたグループでは、描画モードはグループ内にのみ適用されグループの外には影響しない。

となります。まずはこの原則を覚えておきましょう。
ここからはIllustratorの挙動の確認です。透明処理の周辺では様々な機能が影響を及ぼしますのでそういったものがどのように影響するのかを順を追って見ていきましょう。

「グループの抜き」を適用したグループに対する描画モードの分離

先ほどのグループにそれぞれグループの抜きを適用します。

グループの抜きが設定されたグループ内では各グラフィック属性は最上位のものを利用し、グループ内の下にあるオブジェクトをノックアウトします。そして、グループの抜きを適用したグループに対して描画モードの分離を行うとグループの下にあるオブジェクトをノックアウトします。
左の描画モードを分離していないグループでは、グループの下にあるオブジェクトに対してグループの抜きで有効になるオブジェクトの描画モードが有効になります。なので、左のグループでは各オブジェクトがグループ内でノックアウトされた上で下のストライプに対して乗算で処理されます。一方、右の描画モードを分離したグループでは各オブジェクトに設定された描画モードがグループの下のオブジェクトをノックアウします。その結果、グループの下に何もない状態で描画モードが適用されることになりますので描画モードの設定は無効になります。

さて、この状態のグループに対して描画モードを設定した場合を見てみましょう。

描画モードのオン・オフでの挙動を見るためにそれぞれのグループに対して乗算を設定してみました。
描画モードを分離をONにしたものは普通に乗算されています。しかし、描画モードを分離していない通常のグループの抜きを適用した状態のグループではグレーのストライブのグレーの濃度が上昇しているのが見て取れます。これはどうなっているかというと、グループの抜きによって下のオブジェクトとの合成値がグループとして乗算されたことで再帰的に処理され二重にグレーが重ねられる状態になります。この挙動はおそらくバグです。基本的にグループ化したものに対しては描画モードを設定しないのが無難です。

透明パネルのフライアウトメニューのオプション

透明パネルのフライアウトメニューの右上のアイコンからアクセスするフライアウトメニューに含まれる「ドキュメントの描画モードを分離」「ドキュメントのグループの抜き」はドキュメント全体にこれらの効果を適用するものなのですが、Illustrator形式ファイルのPDF互換部分を正常に書き出せないバグがあります。ドキュメント全体に適用したい場合でも、現状はこれを利用しないでグループ個別に設定を行うようにしてください。

という事で、透明パネルに関するディープな部分を数回に分けて解説してきました。結構なバグが内在しますので利用には注意が必要な部分もあります。しかし、仕組みを理解しておけば手数を減らせたり表現の幅が拡がるのも事実です。正しく理解した上で上手に利用していただきたいと思います。

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Graphic Designer, Scripter and Coder. Adobe Community Professional.

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