Illustratorの「グループの抜き」を解説してみる

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地方都市に居住していると観測範囲が限られていまして、身の回りにいる人間が判断基準になることも多分に影響しているのだと思います。

まあ、のっけからわけのわからないことを書いている次第ですが、先日「グループの抜き」に関する事をちょっとXに流してみたのですが、けっこうみなさん透明にして抜くという事の捉えにくさに振り回されているというのが視覚化されたように思います。

という事で、今回は小手先のテクニック云々ではなく、「グループの抜き」についての本質的な部分をしっかりと解説してみたいと思います。

そもそも「抜き」って何?って思った人も少なからずいらっしゃるかと思いますので、まずはそこからご説明を。

左が「ぬき」で右が「のせ」に設定してあります。プレビューの状態で見ると左右双方ともに同じ見た目になっています。ここでオーバープリントプレビューに切り替えてみると……

はい、違いは明白です。左側の「ぬき」では上の円は下の四角の色の影響を受けていませんが、右の「のせ」では上の円の色が下の四角にのっかって重なった部分の色は合成されています。

この左の状態を「ぬき」または「ノックアウト」といいます。上の図形である円が占める領域ではその円の色だけが有効になります。まずはこの基本を押さえておきましょう。
で、公式のヘルプの「透明なグループの抜きの作成」の項目を見てみると……

「透明なグループの抜きでは、グループの要素が相互に透けることがありません。」

ずいぶんと乱暴な書き方なんですね。これでは本質をとらえようがなかったりします。ということで、他の資料を見てみる事にします。この機能は「Knockout Group」と呼ばれるものです。実はPDFの定義上にこのKnockoutGroupが存在します。ちょっと前にもこの部分を解説しているのですが再掲してみます。

ノックアウトグループでは個々の要素はグループ内の先行する要素の積み重ねではなく、グループの初期背景と合成されなければなりません。オブジェクトが2値形状(内側は1.0、外側は0.0)を持つ場合、各オブジェクトは、同じグループ内で重なる以前の要素の効果をノックアウトします。任意の点で、その点を囲む一番上のオブジェクトだけが、グループ全体の結果の色と不透明度に寄与しなければなりません。

(PDF3200-2008.pdf P.338)

文章としてはちょいと理解するのに手間なものですので少しかみ砕いて記しておきましょう。

ノックアウトグループでは重ねられた効果や色を合成せず、一番上に見えているオブジェクトの色及び不透明度をその部分の表示として利用します。つまり、グループ内では上にある図形が常に下の図形をノックアウトします。そうしてグループ内の領域が決定された上で背景と合成されます。
ということで、下の図を参照ください。各領域の色及び不透明度がどのように決定されているのかを示したものです。

上の図ではそれぞれ黄色の矩形とマゼンタ及びシアンの円の3つがグループ化されています。右のグループはグループの抜きがオフになっているため、それぞれの図形の色及び不透明度による計算の上でグループの表示が計算されます。一方、左のグループの抜きが設定されているグループでは色及び不透明度は一番上に見える図形の形状によってほかの図形がノックアウトされ、その領域の表示を決定しています。


という事で、次回は描画モードの分離等も解説してみます。

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Graphic Designer, Scripter and Coder. Adobe Community Professional.

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