InDesign、idleTaskの見本
InDesignではタスクを一定時間待った後に実行するというクラスが存在します。これを再帰的に回し続けることで一定時間ごとに同じ処理を繰り返し行う事ができます。
これはアプリケーションの状態監視に利用できる手法であり、通常のイベント処理関連ではカバーできない範囲の処理を一定時間毎にドキュメントの状態を監視することでイベントによるトリガを擬似的に実現します。
今回はルビ処理の為のScriptUIを利用したヘルパースクリプトをサンプルに解説します。
※この記事は以前AdobeForumに提供していたものですが、システム変更時に「自動処理総合フォーラム」諸共破棄された記事を再編集したものです。
まず下に示すのはフルコードです。
(function() { var ps; if (app.selection[0] instanceof Character ||app.selection[0] instanceof Word ||app.selection[0] instanceof InsertionPoint ||app.selection[0] instanceof Text) { if (app.selection[0].toString().indexOf(InsertionPoint)>-1) { ps = app.selection[0].index; } else { ps = 0; } if (app.idleTasks.itemByName('rubyPalette')!=null) app.idleTasks.itemByName("rubyPalette").remove(); var idleTask = app.idleTasks.add({name:'rubyPalette', sleep:250}) .addEventListener(IdleEvent.ON_IDLE, task1); //Create UI var w = new Window ('palette', 'ルビ処理', undefined); var tx = w.add('edittext', undefined,'', {multiline:false}); tx.characters = 20; w.submitBtn = w.add('button', undefined, '適 用', {name:'ok'}); w.closelBtn = w.add('button', undefined, 'とじる', {name:'close'}); w.closelBtn.onClick = function() { app.idleTasks.itemByName("rubyPalette").remove(); w.close(); } w.submitBtn.onClick = function() { app.selection[0].rubyString = tx.text; app.selection[0].rubyFlag = true; }; w.show(); } function task1(ev) { app.idleTasks.itemByName("rubyPalette").remove(); if (app.selection[0] instanceof Character ||app.selection[0] instanceof Word ||app.selection[0] instanceof InsertionPoint ||app.selection[0] instanceof Text) { if (app.selection[0].index!=ps) { tx.text = app.selection[0].rubyString; ps = app.selection[0].index; } app.idleTasks.add({name:'rubyPalette', sleep:250}) .addEventListener(IdleEvent.ON_IDLE, task1); } else { w.close(); return; } } }());
まずはUIの方から説明します。以下に抜き出したのはScriptUIで構成された部分です。
var w = new Window ('palette', 'ルビ処理', undefined); var tx = w.add('edittext', undefined,'', {multiline:false}); tx.characters = 20; w.submitBtn = w.add('button', undefined, '適 用', {name:'ok'}); w.closelBtn = w.add('button', undefined, 'とじる', {name:'close'}); w.closelBtn.onClick = function() { app.idleTasks.itemByName("rubyPalette").remove(); w.close(); } w.submitBtn.onClick = function() { app.selection[0].rubyString = tx.text; app.selection[0].rubyFlag = true; };
フローティングかつノンブロッキングなpaletteで作られています。これは、編集作業とUIパネルでの入力を両立させるための物です。UIの構成としてはedittextとボタンが2点のシンプルな構成です。各要素も位置関連情報をundefinedに設定してあるために自動配置となります。各ボタンにはonClickでのイベントを設定してあります。submitBtnの方はstory内の選択したcharacterに対してrubyStringとrubyFlagを設定します。つまりルビ文字を割り当てて表示させるということです。
このUI部分はこれだけでルビ入力用のフローティングパレットとして利用可能な物となっています。
続いては先頭部分のドキュメント上で選ばれているオブジェクトによる振り分けです。
if (app.selection[0] instanceof Character ||app.selection[0] instanceof Word ||app.selection[0] instanceof InsertionPoint ||app.selection[0] instanceof Text) { if (app.selection[0].toString().indexOf(InsertionPoint)>-1) { ps = app.selection[0].index; } else { ps = 0; } ・ ・ ・
このように選択範囲のインスタンスをチェックしてテキストに関連するものでない場合は、何もせず処理をスキップするように構成されています。ここで利用されているinstanceof演算子は対象オブジェクトの基となるプロトタイプにコンストラクタprototypeプロパティが存在するかを見ます。ややこしいことを書いていますが、該当オブジェクトがどのコンストラクタを基に作られたかを見るためのものです。
その次に続くのは、現在選択されているテキストのカレットの位置の記録です。これはidleTaskがスリープ後、再度処理に入った際に選択範囲が変化していないかどうかをチェックする際に利用します。
続いてidleTaskに関連する部分に入ります。
if (app.idleTasks.itemByName('rubyPalette')!=null) app.idleTasks.itemByName("rubyPalette").remove(); var idleTask = app.idleTasks.add({name:'rubyPalette', sleep:250}) .addEventListener(IdleEvent.ON_IDLE, task1);
まず予防措置としてこれから登録するidleTaskが既に存在するかどうかをチェックします。これは予期せぬ重複などの好ましくない状況を未然に防ぐためのものです。もし存在する場合はそれらを一旦破棄します。
idleTaskはapplication下のクラスでaddメソッドを利用します。上の例ではnameとsleepの2つのプロパティをaddメソッドの引数として与えて生成しています。この例ではaddEventListenerメソッドをチェーンし
てidleTaskがsleep終了後に実行するtask1(function)を指定しています。このidleTaskの最大の特徴はノンブロッキングである点です。類似の機能に$.globalに存在するsleepメソッドがありますが、このメソッドはスリープしている間アプリケーション 全体をブロックします。一方、idleTaskはスリープの間はバックグランドに沈んでアプリケーションの動作を阻害することはありません。
さて、スリープタイマーが指定時間になると以下の関数を実行します。
function task1(ev) { app.idleTasks.itemByName("rubyPalette").remove(); if (app.selection[0] instanceof Character ||app.selection[0] instanceof Word ||app.selection[0] instanceof InsertionPoint ||app.selection[0] instanceof Text) { if (app.selection[0].index!=ps) { tx.text = app.selection[0].rubyString; ps = app.selection[0].index; } app.idleTasks.add({name:'rubyPalette', sleep:250}) .addEventListener(IdleEvent.ON_IDLE, task1); } else { w.close(); return; } }
ここで行われるのは選択範囲の比較で、最初にやった処理と同じです。アイドルする前のテキストポジションと現在のテキストポジションを比較して変化がある場合に選択文字のルビ情報を抽出してUIに返します。
その後再び現在選択されているテキストの位置を記録して再度同じ設定でidleTaskを実行します。この様に再帰的にidleTaskを実行し続けることで擬似的に選択範囲の変化を捕まえることができます。