ストック写真等での留意事項

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AdobeStock等のサービスに登録または、アセットを購入する際の注意点というのがいくつかあります。そのうち、既存の物に対する著作権や商標権を侵害していないかどうかというものがあります。そういった点をしっかり考慮しないと販売側の方はアセットの登録を拒否されたりアカウントの停止という事にもなりかねません。利用者にしても、著作者からの賠償請求を受けたりという可能性もあります。(ストックサービス側の管理も万全ではありません。)
という事を日ごろから注意深く見ておき、頭の片隅に残しておけばいざというときに役に立つことと思います。
今回は、そういった著作権・商標権に関するものの内、興味深い事になっている物とかをピックアップしてみました。

エッフェル塔
著作権自体は消滅しています。なので自由に商用利用できそうですが、注意点があります。夜間のライトアップ(照明演出)は 「Société d’Exploitation de la Tour Eiffel(SETE)」 によって設計されたもので、「独自の芸術作品(光の演出)」として著作権で保護されています。
ということで、昼間の写真は商用利用OKだけど、夜間のライトアップされたイメージはSETEの許諾が必要になります。

エンパイアステートビル
こちらも古いビルですから保護期間が終了していますが、商標として登録されています。メインの焦点として扱われた都市景観は利用不可です。

自由の女神像
著作権は消失していますので、商用利用は可能です。しかしながら、ラスベガスなどにあるレプリカは著作権が有効なものが存在しますので注意が必要です。

サグラダファミリア
外観写真自体は商用として利用できます。内部のイメージやシルエット等のシンボルについては利用に注意が必要です。

ラスベガス、ストリップ地区の都市景観
各施設の制限の厳しさや規制などの影響で権利関係やプロパティーリリースが複雑になります。AdobeStockでも却下されます。リゾート地等では各施設の敷地が複雑に入り組んでいたり、写り込む人物等の問題もあり、商用での利用の難易度が高くなります。

マーライオン公園
マーライオンはシンガポール政府が商標権を持っている為、商用での利用ができません。

東京スカイツリーと東京タワー
著作物でありますが、写真の利用に関しては公共の空間に設置されている建築物という性質上、著作権的にはFOPに該当しますが、外観・形状が商標登録されているためにシルエットやイラストレーションには商用利用には制限があります。都市景観として撮影された状態で商標権を侵害しない場合は商用利用が可能となります。

レインボーブリッジ等の公共建造物
公共の空間に設置されている建築物なので多くの建造物は商用利用が可能です。

松本城
公式のアーカイブスからの配布もあり、「国所有の文化財であり、国民共有の財産との認識から肖像権の主張はしておりません。」との事です。しかしながら、合成やレタッチにより事実と異なる・誤解を招く恐れのあるものは禁止とされています。

その他の古城や仏閣
中世建築の古城の場合、著作権自体は消失していると推定されますが、敷地自体が管理された公園となっていたりしますので、商業撮影には管理者による許可が必要な場合があります。都市景観として敷地外から撮影される場合は問題ありません。
ただし、寺社仏閣では厳島神社の様に各法人が写真利用を制限しているケースもあり、そのような場合は個別に確認・申請が必要です。

道頓堀のグリコ看板
公共に設置された屋外看板です。都市景観としてみるかどうかはこの看板がどのように表示利用されるかによります。メインの被写体と判断できる可能性がある利用方法では権利者である江崎グリコ株式会社の承認が必要になるケースがあります。

最後にFOPについての説明
「パノラマ(風景)の自由(FOP:Freedom of Panorama)」という言葉があります。公共の場所に配置されている建築物や彫刻等の芸術作品に関しては、その著作権を侵害することなく写真や動画を公開する事を認める著作権法上の規定です。これに関しては各国の対応は様々なのですが、日本では著作権法の第46条に規定されています。

第46条(公開の美術の著作物等の利用)
美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

この様に建築物や芸術作品の複製を目的としない場合、公共空間に配された物の商用写真撮影等は著作権法上は行えるという事になります。しかしながら、考慮すべき商標権や、別途定められた規約等がある場合は消費者契約法や一般不法行為に問われる可能性があります。
ということで、有名な建築物などの写真を商用利用に取り扱う際には登録商標や利用規約等にご注意を。

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Graphic Designer, Scripter and Coder. Adobe Community Professional.

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