制作物の権利について ―意匠権

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さいきん、DTPだかなんだかわかんない情報が多くて申し訳ないのですが、これらも大切なことなのでお付き合いください。
著作権・商標権というのは著作者等がその持つ権利を法律で明確に規定し保護するという目的で運用されるわけです。ここまで著作権と商標権に関した情報をお届けしてきましたが、もう一つ重要な「意匠権」というものがあります。わたしたちのようなデザインに携わる者にとってはこちらも重要で、運用するアセットに関する注意としても重要ですが、自ら生み出したデザインについても権利を主張し保護するという手段を取ることができます。
今回は、この意匠権についてざっくり説明すると共に、世の中にどのようなものが保護されているかというのを具体的に見ていきたいと思います。
では、概説から始めましょう。

意匠権ってなに?

意匠権は、物品や建築物などの外観デザインを保護する権利です。美的価値だけでなく、製品差別化のためのデザインも対象となります。この権利は著作権とは異なり、特許庁への出願と審査を経て登録されることで発生します。

保護対象
物品(家具、家電、衣服など)、建築物、内装、画像デザイン(アプリのアイコンなど)。
目的
独創的なデザインを保護し、模倣を防ぐことで、創作活動を奨励し産業の発展に寄与します。
権利の発生:
出願後、特許庁の審査を経て、登録料を納付することで権利が発生します。
存続期間
出願日から最長25年
効力
登録された意匠と同一または類似の意匠を、業として実施することを禁止できる。
外観デザインの模倣防止が主な目的。

このように、デザインに関する様々な要素を保護できるのが特徴です。
では、具体的に的にどのようなものが意匠登録されているのか見ていきましょう。

ファンシーペーパー
「レザック82ろうけつ」の原画が1983年に著作物登録(第12464号)がおこなわれています。そのほかにも幾つかのファンシーペーパーの原画が著作物として登録されています。これとは別に意匠登録も行われていてPlatPatでも複数検索可能です。

かぐや(たちまち)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2013-012322/30/ja

エニール
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2000-005644/30/ja

こういった有名どころのファンシーペーパーがありますが、エニールなどは既に存続期間が満了していますので意匠権自体は消滅しています。

キッチンペーパーやワイパーのエンボス柄
こちらもテクスチャ―パターンが登録されています。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/d0200
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-1999-021608/30/ja
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2014-012326/30/ja
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2008-032126/30/ja

生地や壁紙
テキスタイルに関連するパターン柄だけでなく、織り方に由来するテクスチャ―等が多岐に渡って登録されています。

包装用資材
包装紙だけでなくパッケージの展開図等が多数登録されています。

紙幣
紙幣類も意匠登録が行われます。元々紙幣は他の法律(刑法、通貨法)で厳しく制限されるものですが、意匠登録により類似性を有するデザイン自体を排除する目的があります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2020-003791/30/ja

証券用紙等で利用されるかざり
財務省印刷局によって相当数が部分意匠として登録されていました。現在はほとんどが失効しています。デザインの参考に見てみると良いかもしれません。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2001-008131/30/ja

と、まあ、様々なものが意匠登録されています。デザインの際にはこういったものも注意が必要です。あと、権利失効についても把握しておくとよいでしょう。

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Graphic Designer, Scripter and Coder. Adobe Community Professional.

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